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2023年08月

糖尿病診療における「生活習慣」の考え方(院長より)

2023.08.17

 2型糖尿病はインスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む遺伝因子に、生活習慣(食事や運動)、加齢、ストレスなどの環境因子が加わり発症すると考えられています。糖尿病は生活習慣が重要ですが、生活習慣に影響を及ぼしているのは本人の能力・意思だけでしょうか?生活習慣に関わる社会的要因の影響を考慮すべきという「健康の社会的決定要因」1)が提唱されています。糖尿病に関与する社会的決定要因として、社会経済学的状態(教育、収入、職業)、近隣の生活環境(居住状態・環境)、食環境(食のアクセス・利便性)、健康管理(アクセス、コスト、質)、社会関係(社会的孤立状況・つながり・支援)が挙げられています2)。例えば、仕事が夜遅くまであるため夕食が遅くなったり、職場が遠く自家用車で通勤しデスクワークのため身体活動量が少ないケースがあります。このように生活環境、生育環境、職業、収入などが生活習慣を形成することから、生活習慣そのものも本人の嗜好や意思の問題ではなく、「健康の社会的決定要因」が生活習慣を決定していると考えられます。

 糖尿病は「生活習慣病」の1つとされてきました。「生活習慣病」のラベルは、生活習慣の問題が個人の問題(怠惰や能力の欠如)という誤った認識を生み出す原因になっている可能性が懸念され、「健康の社会的決定要因」が提唱されています。

 糖尿病診療では生活習慣の改善が重要ですが、当院では生活習慣の背景にある「健康の社会的決定要因」を考慮して糖尿病の方の治療支援に努めています。

院長 野島秀樹